「大阪ブランド」春夏秋冬魚庭(なにわ)天
平野区西脇の広い道路に南面して白い工場がある。見上げると白地に魚竹と赤い文字の看板が青空に冴える。(有)魚竹蒲鉾店は、元は商店街に並ぶ蒲鉾製造小売りの1商店だった。全国的に蒲鉾の消費量は減る一方で、最近は天ぷら(ねり天)の販売が主力だ。スーパー内に専門店を構えて販売を続けたが、売れずに途方に暮れる事もあった。ある時、レジ内の陳列で商品をばら売りしたところ、美味しさ再発見の効果が評判を呼んだのか、飛ぶように売れ始めた。商店街の小さな設備では間に合わず、文頭の新規工場の建設となった。ところが欧米でのカニカマ人気や中国での魚の消費量急増、原材料費に加えて原油価格も高騰するなど、資源問題に直面し、経営の見直しを図る必要に迫られることになった。
蒲鉾や天ぷらの製造会社は数多いが、漁港から水揚げした魚をすり身に加工できる会社は今や数える程で、すり身の9割以上は輸入だ。すり身は冷凍すると風味が落ちる。食感も固くなる。昔の蒲鉾は生魚を使っていた。「生魚を使った蒲鉾や天ぷらを製造販売できないか?」と、コストにも見合った美味しい原材料を求めて動き始めた。「大阪湾でとれる未利用魚(底引き網で水揚げしても市場に出ずに廃棄される魚。府の漁港で年に150トン発生。)を使えないか?」と考え、ついに自社設備をもって研究開発を進めた。
開発にあたり、「おおさか地域創造ファンド」(大商が事務局の助成制度)に応募したところ、当計画が大阪の地域ブランドに育つ将来性を認められた。
ハードルは少なくない。200キロの生魚は80キロのすり身にしかならないし、未利用魚は安定して仕入れる事ができない。また、同じ生魚で同じ工程で製造しても季節や天候など気温や湿度の違いのためか、同じモノはできない。「蒲鉾は生きている。難しい食品」と社長も頭をひねる。
大阪の生魚の味や香りを明確に残して大阪のブランドを創りたい、と日々試行錯誤の研究に取り組む。同社は製造した天ぷらを、翌日は皆で販売にまわる。佐藤会頭が訪問した夕刻は、従業員の大半が朝から販売に出かけた日で、誰もいない静かな工場だった。(東住吉・平野支部)
(※ニューズレター234号(発行:大阪商工会議所・2010年6月25日)より抜粋)
商品サービス情報一覧
企業情報
- 企業名
- 有限会社魚竹蒲鉾店(事業所概要詳細)
- 所在地
-
大阪府大阪市平野区